「理子が不登校になったの、深雪なにか理由聞いてない?」
よく喋る友人が彼女を心配したのか、
一番親しいと思われる私に相談してきた日のことだった。
″理子″が誰なのか皆目検討もつかずに首を傾げれば酷い奴だと、下げていた眉毛を思い切りつり上げて、その子は怒った。
「深雪、いつも一緒にいたじゃない!心配じゃないの?!理子、学校やめるかもしれないのよ!」
深雪?ああ、それは私の名前か。
理子?じゃあそれは誰の名前?学校をやめる?いつも?いつも一緒にいた?
いつも一緒にいるのは目の前のあなたじゃない。じゃあ一体それは誰?
「あなたが仲いい子を私は知らないもの」
仕方なくそう告げれば、本気で言ってるの、と彼女は声を震わせた。
肩も、静かに震えているように思えた。
「理子だよ、いつも一緒にいたでしょ?どうしてわからないのよ!移動教室も全部深雪は理子と一緒だったじゃない!理子が来なくなってもう1ヶ月経つのになんで気づかないのよ!!!」
ポタリと机にシミを作る水滴を、私はじっと見つめることしか出来なかった。
ただ何となく、自分が悪いことをしてしまった気分になり静かに「ごめんなさい」と頭を下げた。