「ヒユウ?明日なんかある?」
「明日は、」

明日は確か土曜日だ。仕事もない。
仕事のない日は基本いつも家にいる。
私の携帯の連絡先は両親と彼しかいない。それを見る度私には誰もいないのだと気づく。

「何もない、と思う」
「そっか、よかった。じゃあ明日映画見に行こう?」
「映画…わかった」

例えば、いつかの恋人と別れたことを覚えてているように、今した映画の約束も私は明日になっても忘れない。ただ、誰としたのか曖昧になってしまうだけ。人が関わると私の脳内はモヤがかかったように、みえにくくなるのだ。

「よし、じゃあご飯つくるね、ヒユウお風呂入っておいで?」
「あ、うん。ありがとう」


私の家をいつの間にか私よりも把握している彼が、ご飯をつくるのも今日が初めてじゃない。お風呂なんていつの間に用意してたんだろう、とか疑問は1日のうちに何個も出てくるけど腐ってもそんなことは聞けやしない。