例えば、彼のいうセツナが私と瓜二つの人間で彼が求めているのが私じゃなかったとしても、それでもいいと思った。
彼が求めるセツナに見えるのならそれでいいと思えた。
私を呼ぶ声が遠のいていけば、きっと私は自分の名前が何なのかすらわからなくなるのだから。そうやって私は流れに流れて生きていく。求めてくれる人に従って、逆らいもせずに。
そうやって生きていくしかないのだ。
「ありがとう、」
答える名前を私は知らないけれど。それでもこれからも彼が私の前にいてくれるなら、彼に縋ってくのだろう。
掴んだ彼の手をしっかり握りしめて、彼の後ろを追った。