カタカタとキーボードを弾く音を聞きながら、私はその人のことをぼんやりと考えていた。
気づけば日も暮れていて、周りの子たちがお疲れ様ですと去っていく中、私はすっかり綺麗になったデスクを眺めていた。
どうしたらいいのかわからない。メモの切れ端を取り出してはしまうのを繰り返して、もう何分経っただろうか。
ぼーっとしていた私を見かねてか、上司が帰るように促してきて仕方なしに立ち上がる。
エレベーターが下へ降りていく度に焦りも募っていく。
どうしたらいいんだろう。もし、私がその人をわからなかったらどう対応したらいいのだろう。今までこんなこと思ったことなかったのに、不安ばかりが募る。
「セツナ、お疲れ様」
チンという音と共に顔を上げると、すぐ近くにふわりと微笑む男の人が立っていた。
真っ白な肌が、目を引く。