「うん、そっか、ありがとう教えてくれて」


彼の白い手は私にゆっくりと伸びてきて、
私の頭に優しく触れる。

静かに撫でられるそれが、嫌いじゃないと思った。

「セツナ、送ってくよ家どっち?」
「あ、あっち」

私がとっさに山側を指さすと、私の頭を撫でていた手は自然とその手に伸びてぎゅっと握られた。

私の手を取ってにっこりと笑う彼は、悪い人には見えなくて。家に帰るまでの道のりを一緒に歩くことに、不快感はなかった。

「セツナは今なにしてるの?大学いってるの?」
「就職して事務やってるの」


いつの間にか敬語がとれていることに気づいたけれど彼はそれすらも嬉しそうに笑うから、気にしないことにした。