その日、私は読むはずだった本を忘れて少し落ち込んでいた。ただでさえ朝は妻と些細なことで言い合いをして家を出てきたのに。ただの読書でもこんな定年前の爺さんには1日の疲れを癒す大事な時間なのだが。
仕方なく妻と選んだスマートフォンを使ってみたりしていた。
「おわっ、わっ」
「へ、わあっ」
ふいに電車が急停止した。持っていたスマートフォンは手のひらからスルリと滑り床に落ちた。ゴン、という鈍い音がして慌てて拾ったが少し傷がついてしまった。なんということだ。今日は運が悪い。
電車は線路内に物が落下しただけらしくすぐに発車した。
「バイバイ」
スマートフォンの傷を気にしているとふいに声がした。何気なくそちらを見ると高校生らしき女の子が同級生の男子に手を降っていた。しかし男子の方はどこか違う方向を向いて返事もなぜか曖昧だ。少し疑問に思ったが私は男子の方の表情を見て思わず口元が緩んでしまった。
そうだ。せっかくだから妻にメールでもしてみよう。
「...おー」
そう言って女の子に背を向けた男子の顔は手で覆っても隠せないほどほっぺたまで林檎みたいに真っ赤だったのだ。
仕方なく妻と選んだスマートフォンを使ってみたりしていた。
「おわっ、わっ」
「へ、わあっ」
ふいに電車が急停止した。持っていたスマートフォンは手のひらからスルリと滑り床に落ちた。ゴン、という鈍い音がして慌てて拾ったが少し傷がついてしまった。なんということだ。今日は運が悪い。
電車は線路内に物が落下しただけらしくすぐに発車した。
「バイバイ」
スマートフォンの傷を気にしているとふいに声がした。何気なくそちらを見ると高校生らしき女の子が同級生の男子に手を降っていた。しかし男子の方はどこか違う方向を向いて返事もなぜか曖昧だ。少し疑問に思ったが私は男子の方の表情を見て思わず口元が緩んでしまった。
そうだ。せっかくだから妻にメールでもしてみよう。
「...おー」
そう言って女の子に背を向けた男子の顔は手で覆っても隠せないほどほっぺたまで林檎みたいに真っ赤だったのだ。