〜叶多 side〜

(今日って4月20日か。つーことは…)

「そーいえば、今日『先輩』たち帰ってくるな」

何気なく言った言葉。それが後悔の種となる。

「!!」

期待か喜びか、はたまた緊張か、顔を赤くさせ瞳を揺らす美晴。

(あぁ、まただ)

俺はコイツの『こういう』目が嫌いだ。

俺以外を見つめ、俺以外に心を奪われ、『好き』の気持ちが溢れている瞳。

知っている。コイツは藤原先輩に惚れている。でも、俺は確信しているんだ。それは恋じゃなく、憧れだって。端から見たら僻(ひが)みに見えるが、自信を持って言える。

確かあれは去年の夏だ。

夏の全国大会の初戦で、強豪校である向賀崎(こうがざき)学院に当たって初戦敗退した時。

あの時、マネージャーとして支え切れていなかったと落ち込んでいた美晴に対して言葉をかけたのが藤原先輩だ。

「お前のせいじゃない。これは俺達がアイツらに及ばなかったってだけの話だよ」

それでも涙する美晴に御守りを渡し、手を握って、

「来年、俺がお前を全国大会に連れて行って、優勝して、パレードを見せてやる。約束するよ」

そう言って、指切りをしていた。

(あれから、美晴は藤原先輩ばっか見てた。ムカつくから俺も一生懸命がんばってあの人より目立とうとしたけど、藤原先輩にはなかなか勝てなかった)

今度こそ藤原先輩を追い越して、俺がアイツにパレードを見せてやるんだ。約束は俺が果たしてやる。俺が『負けたまま』じゃ気に食わない。

俺って、負けず嫌いだからーー。