「おーーーい、帰ったぞーーー!」

体育館の扉が開けられたと同時に大きく高らかな声が響く。

(この声は…!)

「藤原キャプテン!!」

藤原 慎(ふじわら まこと)先輩はバスケ部の新キャプテンで、何年もバスケを続けてきた実力者。そして……

(私の憧れの人…ーーー)

3年の先輩たちが帰ってくる中、真っ先に藤原先輩に駆け寄る。

「先輩!お帰りなさい!」

「おぅ、芹崎!久しぶりだなぁ。元気してたか?」

クシャクシャ、と乱暴に頭を撫でられ抗議するも、先輩の無邪気な笑顔を久しぶりに見られて柄にもなくこっちまでニヤけてしまう。

「何か困ったことはなかったか?今マネージャーはお前一人だからな、大変じゃなかったか?」

「いえ、全然。先輩たちがいない間も特に困ったことはなかったですし、重い荷物とかはみんなが手伝ってくれてたので」

「そうかそうか。なら良かった!お前はちっこいからなぁ、俺たちを頼れよ。いいな?」

「……はい」

頭を撫でられるたび幸せと恥ずかしさで体が熱くなる。藤原先輩は私の気持ちに気付いていない(だろう)から、遠慮なく頭を撫でたり私に触れたりする。

(うぅー…心臓が痛い…ッ)

頭から湯気が出ている美晴や、それを面白がる藤原を見て不機嫌そうに見つめる視線が一つ。