(今年こそ全国大会で優勝して、『あの人』を喜ばせるんだ!)
そう意気込んでいると、
「ーー美晴。水」
後ろから叶多が手を差し伸べる。
「あ…はい」
「ん」
オレンジのボトルに入った水を手渡すと、それを一気に喉に通す。
叶多はこの部のエースでもあり得点源でもある為、人一倍コートを駆ける。普段の姿からは想像つかないほど真剣に取り組み、バスケ部で活躍している。
(来週の予選試合で勝てれば流れに乗れる。最初の一試合目が今後の試合に繋がるから、どうにか勝たないと……)
前半の練習の様子を記した記録表をじっと見つめていると、叶多から声がかかる。
「なに難しい顔してんの。そんなに眉間にシワを寄せてたら戻らなくなるぞ」
「………余計なお世話よ」
いちいち茶化さないと気が済まないのか、この男は…と思いながら叶多を睨む。が、叶多はそれをスルーし、言葉を続ける。
「そーいえば、今日『先輩』たち帰ってくるな」
「!!」
そ、そういえば今日だっけ…!?
今日は、春の合宿に行ってきた3年生たちが帰ってくる日。ということは、バスケ部の先輩たちも帰ってくるわけで……