・
・
・
「アンタ達っていつ『くっつく』訳?」
「は?」
彩香が面倒くさそうに言った言葉に思わずハテナを浮かべる。
「なに、くっつくって。私、いま叶多の傍若無人っぷりについて愚痴ってたんだけど」
「いやいや、それ、端から聞いたらただのノロケだから」
「ノロケってなに。意味不明」
「アンタが意味不明」
頭にハテナを浮かべまくっていると、教室の端から聞き慣れた声で呼ばれる。
「美晴。次の授業、俺当たるからノート見せて」
「はぁ?またぁ?なんで毎回私に借りるのよ。たまには他の人に借りて。てかそもそも自分でやって」
「別にいいじゃん。お前が一番借りやすいんだよ。お前ってなんだかんだ真面目にやってるし。だから」
「だからの意味がわかんない。…まぁいいや、後で奢ってよ」
「わかってるって、イチゴミルクだろ?」
「……当たり前」
叶多はニカッと笑って席に戻る。そのやり取りを見ていた彩香は呆れたように溜息をし、
「これでただの幼馴染みってのが気に食わないわー」
「なにそれ」
「アンタ、ほんっとに気付いてないの?」
「何に?」
「御堂君の気持ちに、よ」
(叶多の気持ち…?)
またもハテナマークを浮かべると、彩香からデコピンを食らう。
「いたっ…何?!」
「御堂君かわいそー。早く気付いてやりなよー。多分ああいう天邪鬼な奴って自分からはいけないタイプだから。ってアンタも天邪鬼か。こりゃ大変な組み合わせだわー」
意味不明な言葉を言いながら椅子に凭(もた)れかかり、まるで私が悪者になったような言い方をする。
(もう…ほんっと意味がわかんない)
私達は幼馴染み。仲が良いか悪いかは基準がないから分からないけど、私達はきっとこれからも一緒な気がする。多分、これから先、ずっと。
美晴はそう何となく思い、窓の外の景色を見る。
そこには晴れ晴れとした青空の下、陽射しで照り返す景色が広がっていた。