「アンタ達っていつ『くっつく』訳?」

「は?」

彩香が面倒くさそうに言った言葉に思わずハテナを浮かべる。

「なに、くっつくって。私、いま叶多の傍若無人っぷりについて愚痴ってたんだけど」

「いやいや、それ、端から聞いたらただのノロケだから」

「ノロケってなに。意味不明」

「アンタが意味不明」

頭にハテナを浮かべまくっていると、教室の端から聞き慣れた声で呼ばれる。

「美晴。次の授業、俺当たるからノート見せて」

「はぁ?またぁ?なんで毎回私に借りるのよ。たまには他の人に借りて。てかそもそも自分でやって」

「別にいいじゃん。お前が一番借りやすいんだよ。お前ってなんだかんだ真面目にやってるし。だから」

「だからの意味がわかんない。…まぁいいや、後で奢ってよ」

「わかってるって、イチゴミルクだろ?」

「……当たり前」

叶多はニカッと笑って席に戻る。そのやり取りを見ていた彩香は呆れたように溜息をし、

「これでただの幼馴染みってのが気に食わないわー」

「なにそれ」

「アンタ、ほんっとに気付いてないの?」

「何に?」

「御堂君の気持ちに、よ」

(叶多の気持ち…?)

またもハテナマークを浮かべると、彩香からデコピンを食らう。

「いたっ…何?!」

「御堂君かわいそー。早く気付いてやりなよー。多分ああいう天邪鬼な奴って自分からはいけないタイプだから。ってアンタも天邪鬼か。こりゃ大変な組み合わせだわー」

意味不明な言葉を言いながら椅子に凭(もた)れかかり、まるで私が悪者になったような言い方をする。

(もう…ほんっと意味がわかんない)

私達は幼馴染み。仲が良いか悪いかは基準がないから分からないけど、私達はきっとこれからも一緒な気がする。多分、これから先、ずっと。

美晴はそう何となく思い、窓の外の景色を見る。
そこには晴れ晴れとした青空の下、陽射しで照り返す景色が広がっていた。