ドアノブを捻ろうとした手の反対の手を叶多が掴む。そして私は強い力で引っ張られ、叶多が座る私のベッドに私も座らされる。
「何よ…」
「別に理由はない」
理由はないって…意味がわかんない。
せっかく気を遣って離れようとしたっていうのになんてことをするんだ。
「あのねぇ…私、空気読んで下に降りようとしたのに、なんで呼び止めるかなぁ…!空気読んでよ、馬鹿」
掴まれた手を振りほどき、叶多を睨み付ける。
けど叶多は何処吹く風で中断してたスマホゲームに勤しむ。
「空気読むのはお前だ。俺がここにいる理由くらいわかれよ」
は?どういう意味?わかるわけないじゃん。
「知らないよ。とにかく、私はアンタがいて窮屈だから広い部屋に行きたいの。Really?」
「知ったげに英語使うな」
ぺしっ、と頭を叩かれる。
最低。女に手を上げるなんて。
抗議しようと横を見ると、「よっしゃ!レアカードゲットー」とゲームに夢中になっている。
(よっしゃ、じゃないよ。ほんと……)
意味不明で支離滅裂な言葉に振り回されて思わず溜息を漏らす。
もう1度、その溜息の根源である男をチラリと見やると、視線を感じたのかこちらを向き、「ふん」とドヤ顔。
(ああもう、ほんと何なの)
美晴は大きく溜息をし、そのまま後ろに寝転んだ。