「美晴、リモコン取って」

「……はい」

幼馴染みである私に対してだけに、
こんな扱いだからです。

「アンタが好青年ねぇ……」

「あ?なんだよ」

私にとっては只の面倒くさがり屋の意地悪男子なんですが!?


彼は幼馴染みの、御堂 叶多(みどう かなた)。
生まれた時から親同士が仲良く、家もお隣同士で、お互いのベランダからベランダへ移動できるほど近い距離にいる。

高校2年生になってもこの関係が続く上に毎年同じクラスになるから、一生そばにいるんじゃないかって気になる。

(最悪だ……)

私からしたら、意地悪な幼馴染みにこうして余暇を邪魔されることに苛立ちを感じている。

「なんで私の部屋に居るのよ……」

当然かのように私の部屋に入り浸り、尚且つ私の私物を勝手に使っている。
あの、それ、私の美顔器なんですが……

「なんだよ、今更。いつもこうしてるだろ」

まぁ、そうなんですけど。

そろそろヤバイと思うんだ。こうして幼馴染みだからって好きに部屋を行き来してるけど、仮にも私は女で叶多は男。色々と問題がある。

「さすがにそろそろ部屋を行き来するの止めない?私、女なんだけど」

「は?何言ってんだよ。お前は生物学的には女だけど、女として見たことないから別にいいだろ。つーか、お前、俺を『そーゆー』目で見てんの?マジかー、自意識過剰すぎー。馬鹿なの?お前馬鹿なの?」

「なっ!?」

よくもまぁそんなスルスルと暴言を…
この語彙力の無さもまたムカつく要素だ。

「…もういいよ、好きに使いなよこの部屋。私、下に降りるから…」

もう駄目だ、突っかかれば突っかかる程悲しくなる気がするから早々に此処を退散しなければ。

そう思い、座っていた椅子から立ち上がると、

「ーーちょっと。どこに行くわけ?」

「腹が煮えくり返りそうだからリビングに行くの。アンタはここで好きに過ごしなよ」

ドアノブに手を掛け、捻ろうとする。

…が、それが出来なくなった。

何故なら…

「お前はこっち」

「は!?ちょっ…」