◆幼馴染みなことに理由なんていらないでしょ?◆







「美晴、ご飯食べよ」

「あ、うん。机くっつけよっか」

私、芹崎 美晴(せんざき みはる)は、親友である女友達・土谷 彩香(つちや さやか)とお弁当を食べる為に机を真向かいに向かい合わせる。

私の席は窓側で南向きな為、陽当たりがよく暖かい。おまけに、今日から2年生ということで昨年度より教室が1階分高い為見晴らしもいい。正にお弁当を食べるには良い位置なのだ。

「にしてもラッキーだよねぇ。うちの新しい担任、かなーーーり緩そうだよ。入学式終わって教室に集まってみれば、『適当に席替えでもするかー。どーせお前ら好きなモン同士でくっつきたいんだろーから、好きに席を替わってくれ。席替え表はお前らで用意するよーに』とか言うんだよ?あれで教師なのが凄いよ」

「ちょ、先生の真似上手すぎ」

気だるそうな先生の真似をする彩香に笑いを少し溢し、朝の集まりを思い出す。

うちのクラスの新担任・相模 裕次郎(さがみ ゆうじろう)先生は、教室に入るや否や怠そうに教卓に立ち、面倒くさそうにクラス名簿に目を通しながら『うーし、全員いるなー』とだけ確認し、簡単な自己紹介と今日からの日程を説明をした。眠そうに話す先生を見ているだけで私達まで眠くなる。そのくらい気だるそうな人だった。

「インパクト凄かったね」

「ほんっとそれ!やる気なさそうだけど、無茶苦茶お堅い先生より断然いいわ」

「まあ確かにね」

と他愛ない会話をしながら、目の前に広げたお弁当を堪能する。

あ、今日は私の好きなイチゴがある!
これは最後に取っておかなくちゃ……

と、その時ーーー。

「ーーおい!美晴!!」

「っ……!!」

ギクッ…という擬音が正しくつきそうな場面。
私は大きな声に反応するように肩をビクつかせる。

こ、この声は……

恐る恐る教室の隅の方を見やると、

「なぁ。俺の弁当の方に箸がなかったんだけどよ、お前そん中に入ってない?たまに間違えて入ってることあるしな」

「えっ?箸?」

鞄の中を探ってみる。
するとカチャ…とプラスチックの独特な音がした。そこに手を伸ばすと、私のとは異なる深い青色の箸箱が出てきた。

「あ、私の鞄に入ってた。はい」

「おーサンキュ」

箸箱を渡し、私は彩香の方を向き直す。彼もまた友達の方へ戻る。

「…相変わらず威圧感が凄いね、アイツ。黙ってれば只のイケメンなのに」

イケメン、ねぇ……

私は今会話した彼の方を見やる。

彼はクラスの中でも目立つ存在。
それもそのハズ。
彼は艶のある黒髪に謎めくような緑の瞳、身長177cmでバスケ部のエースというイケメン要素がたっぷりの男の子。

端(はた)から見たら誰にでも優しい好青年なハズなのに、私には「只の」好青年には見えない。何故なら……ーー