◆ヤキモチに理由なんていらないでしょ?◆





「よぉーしお前らー!これから………

強化合宿だぁーー!」

「「「おー!!」」」

5月恒例、春の強化合宿。
夏の全国大会に向けて、沖縄で合宿を行う。
我が天宮高校のバスケットボール部は沖縄に宿泊施設を有しており、そこで1週間過ごしながらバスケの練習をする。

マネージャーとしても、力をつけて欲しいのは山々だが美晴には一つの悩みがある。

「美晴ー!」

(げっ…来た…!)

この前の不機嫌MAXな様子はどこへやら、海に来たということで機嫌がMAXに良い叶多は既に水着。

バスケの練習がある午後まで時間がある為、みな思い思いに過ごす決まりなのだ。

せっかく沖縄に来たのだからと水着を着て、海で海水浴を楽しむ部員が多い中、

「あれ?マネージャー、ジャージ?」

一人の男子部員が美晴の姿に注目する。

そう、私は、水着を断じて着ない。着てはいけないのだ。何故なら……

「コイツなぁ、まっっったく泳げねぇから水着着ねぇんだよ」

「…………」

(早々にバラすな、こんのバカなた)

「え〜、マネージャーの水着姿見たかったなー」

「私の見ても何の得にもならないよ」

「何言ってるのさー。女子の水着だよ、それだけでもワクワクするのにマネージャーの水着姿とか……」

「ちょ、ちょっと大丈夫?鼻から血が…!」

何を想像したのか知らないけど、いきなり鼻血を出されてびっくりする。

「はいはいストーップ。あらぬ想像はそろそろストップなー」

鼻血を出し続ける男子部員を手で払ったあと、私に向き合うように立たれる。

「な、何よ」

「行くぞ」

「は?ちょ、何!?」

急に手首を掴まれたと思ったら、そのまま引っ張られる。

「何処に行くわけ!?」

「……」

叶多は無言のまま私の手を引いたまま歩く。
その足は宿泊施設から遠のき、だんだん市街地の方へ……ーーー