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ダンッ…ダンッ…
キュッ…キュッ…
バッシューとドリブルの音がひたすら響く。
その中に1人の息切れの音が混じる。
叶多はなかなか藤原からボールが奪えず、ドリブルをしていてもすぐ奪われシュートを決められる。
そうしていくうちに20分が経ち、試合終了が近付く。
(何してんのよ、叶多…そんな突進しても先輩からボールは奪えないよ!)
最初は藤原のプレイに魅入っていた美晴も、叶多のプレイの粗さや違和感に目を向けていた。
いつもの気取ったような叶多のプレイスタイルが完璧に崩れ、まるで素人のようにひたすらボールに食いつくばかり。
(バカなた、それじゃ取れるものも取れないじゃない!早くしないと、もう試合が……)
なかなか決まらない苛立ちを感じていると、
ピピーッ!
試合終了の合図。
それと同時にその場に倒れ込む叶多。
「叶多!」
美晴は叶多に駆け寄り、上体を起こす。
「馬鹿、何してんのよ」
「……チッ…クソッ…」
「まだまだだなー、御堂。どうしても俺に一泡吹かせたいならもっと強くなれ。お前に実力がついたら、もう一度1on1で受けて立ってやる」
「……はい」
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