「彼女…?」



一瞬そう思ったが
シキの事だ。
案外そうではない可能性もある。


それに
朝から自身のマンションに連れ込むという事は…



「そういう事…だよねぇ」



言葉にはしていないが
成人した男が女を部屋に連れ込むという事は
大概、想像がつく。



「見なかった事にしよう」



それだけ確実に心に決め
何事もなかったかのように
ナツメに頼まれていた書類を取りに
会社へと向かった。



―――社長室。



「サンキュ。
 休みの日なのに悪かったな」


「ううん。平気。
 予定もなくて家にいたし」



言いながら書類をナツメに手渡した。

すると。
ナツメは受け取りながら
なぜかヒメの顔をジーッと見つめている。



「な、なに?」



そんなに見つめられると
相手が誰であっても緊張してしまう。



「二日酔いがひどそうだな。
 でっかいマスクしてんのに
 バレバレ」


「ウソ…」



マスク効果も虚しく
ナツメにはすぐに見破られてしまった。



「昨日は本当に
 ご迷惑をお掛けしました。
 ほっとんど覚えていないんですが…」



深々と頭を下げ
よく覚えていない昨晩の出来事に
謝罪した。