『本題に戻るけど。
 休みのところ悪いな。
 神崎に渡してた明日の総会の議案書類
 1箇所確認したいんだけど
 すぐ出せるか?』



本題を切り出したナツメの用件は
どうやら仕事の話。


多忙なナツメの
書類関係の管理は
ヒメが行っている。



「わかった。
 会社にあるから取りにいくね。
 待ってて」


『あぁ。
 悪いな』



そのまま通話を終わらせると
ヒメは急いで身支度を始めた。


私服への着替えを済ませ
化粧をしようかと洗面所の鏡を見るが…



「お酒の浮腫(むくみ)がひどすぎる…」



化粧をするのを諦め
顔半分が隠れるくらいの
大きなマスクをし
二日酔い満点の体で
部屋を後にした。


エレベーターで1階に乗り
だだっ広いエントランスホールに差し掛かったときだ。



「え、副社長…?」



正面玄関から入ってきた
シキらしき人物と
隣に一緒にいる長身美女の姿を見掛けた。



「見つかるッ」



なぜか反射的に壁際に隠れてしまったが
冷静に考えると
悪い事をしたワケでもないから
隠れる必要がない。



シキらしき人物は
女の腰に手をまわし
密着しながらエレベーターに乗り込んでいった。