そして何よりも気になったのが…



「昔の話だから。
 悪いけど、それ以上は聞くな」



ナツメが前秘書の事に関して
何も話さないという事。


もちろんきっと
今の秘書であるヒメを思っての判断だ。


それはヒメ自身も理解しているが
それだけではない“何か他の理由”があるのだと
ナツメの表情と言葉から察していた。


何か聞かれたくない
2人の関係があるのかもしれない。


思い出か
トラウマか…。


しかし
これ以上は聞くなと言われてしまったため
自身の胸に閉まっておく事にし
静かに社長室をあとにした。




―――ヒメ部屋前。



「前秘書の事も気になるし
 二日酔いはひどいし…
 本当、最悪」



独り言を呟きながら
暗証番号を入力していると…



「ヒメちゃん?」



突然、声を掛けられた。


ハッとしながらも
声のした方を振り返ると
こちらに向かって歩いて来たのは
シキ1人だった。



「副社長…」



ナツメにシキの別室について
話を聞いたばかりだったため
どんな顔して対応したらいいのか
頭の中をフル回転して考える。



「今日は仕事休みっしょ?
 どっか出掛けてたの?」


「う、うん…」



誤魔化すのが
相当ヘタなのか
ヒメは動揺を隠せない。