土曜日はやさしい青空が広がり、テーマパークは“省エネ”どころか予想以上に混んでいた。
クリスマス仕様の街並みはキラキラとまばゆく、冷たい風に赤や緑のペナントがはためいている。
「直は絶叫系とか平気?」
行く先を決めないまま進みながら、パーク内の地図を広げる。
入場ゲートから続く人の流れは、大きなクリスマスツリーや、カフェワゴンや、いくつかある絶叫マシーンに続いているようだった。
「うーん、わからない。真織さんは?」
「スピードが速いやつなら平気。落下するのは苦手だけど」
「どう違うの?」
「直って、ここに来たことないんだっけ?」
「小さいとき一度来たくらいで、あとはここも他の遊園地も行ったことない」
「修学旅行は?」
「修学旅行は行けなかったんだ」
家庭環境にもよるから、そういうこともあるだろう。
カラッと話す直に悲壮感はないけれど、ここで深く掘り下げることは躊躇われた。
大人になれば彼女と行ったと言われてもおかしくないのに、それもないらしい。
「そっか。じゃあ、とりあえずひとつ乗ってみようか」
大人になった直は「彼女とテーマパークに行く」という経験を積み、「絶叫系は苦手」と自覚した。
「ええー……みんなこんなの好きなの? 俺ダメ。絶対無理。今ので昨日の研究吹っ飛んだ……」
本物のモミの木に、金色の星や雪の結晶、赤いリボンがふんだんに飾られたツリーは、生木特有のあたたかみとみずみずしさが感じられる。
多くの人が足を止め写真を撮っているのに、青い顔の直はそれを見もせず、頭を抱えて何やらぶつぶつ言い続けていた。
「しょうがないな。じゃあ、もっと穏やかなのにするか」