「ねぇ……。忍…忍を地下室に放置してきたの……?」

桃花さんが低い声で言った。

「そうするほかなかったんだ。許してくれ、橘」

「ヒドイ……。地下室に置き去りなんてひどいよ」

………。

「じゃああなたが忍の遺体を上まで運べばいいじゃないの。どうぞ、ご勝手にしてください。辺りは血の海だそうよ。そんな血まみれの人間を果たして運べるかしら?」

花織はなんで桃花さんを傷つけることを言うんだよ……。

「……っ。忍……ッ」

桃花さんは泣き崩れてしまった。

「花織!何でそんなこと言うんだよ!!」

「こうでもしないと桃花は地下室に行って忍に会いに行ってしまうわ。遺体を見たことのない人がいきなり彼氏の遺体を見るなんて酷よ。だから良いのよ。これくらい言ってれば」

……そうかもしれないけど……。

「それより、犯人を考えないといけない。ただ、俺と花織は現場を見てないから見る必要がある。いくら状況把握したところで自分で確認しないといけないから」

凌平はそう言って立ち上がる。

「待て。これは遊びじゃないんだ。中学生は引っ込んでろ」

「何言ってるんですか。少なくともあなたよりは経験を持ってますし、捜査の役に立つ自信があります」

「むしろあなたの方が邪魔なんで引っ込んでいてください」

花織と凌平による反撃によって先生は撃沈してしまった。

「……好きにしろ。ただ、ここは携帯が使えないから、これを渡しておく」

先生だって花織と凌平の実力は知ってるはず。

だからこそ捜査を許したんだと思う。

「何ですか?これ」

「インカムみたいなやつだ。どこでも使えるから。何かあったらこれで連絡がとれる。このつまみでどのインカムに声を届けるか選べる。桜田に渡したインカムが1のインカム、道森に渡したのが2。俺が持ってるのが3だ」

「わかりました。では」