花織の言動に怒りが頂点に達し、自己チューだとは分かってながら階段から動くのをやめた。

……私は翔耀が好き。

翔耀に想いを寄せている。

翔耀はそんなことに気づかないけどね。

だから…私がこうやって駄々こねて階段で立ち止まったら翔耀なら一緒に残ってくれるだろう。

そう思って立ち止まってるのもある。

案の定、翔耀は私を皆と一緒に上へ行かせようと説得するため、残ってくれた。

シチュエーションは関係なく、二人きりの時間が嬉しい。

普段は基本的に四人一緒だし、誰にもこの想いを言ってないから。

翔耀が残ってくれて嬉しいはずなのに、

「翔耀も行けば?」

なんて冷たく言ってしまう。

素直になれない。

「こんな気味悪いところに女子一人に出来るわけないだろ。ほら、行くぞ」

優しい翔耀に素直に甘えれたらいいのに。

「………行かない」

「何で?」

「あんなヤツと2度と顔合わせたくない」

これは事実。

ムカつくんだよね……。

自分が一番って態度…。

「そんなこと言ってもさ……」

どうしようもないのはわかってるし、顔合わせないといけないのもわかってる。

「だからもう放っといて」

「夢希が来なかったら俺ら勝てない─」

「勝つためだけにこのゲームしてるわけじゃない」

勝てないじゃない とか花織は言ってるけど、勝つこと以上に人を思いやる方が大切なんじゃないの??

─パシッ

「いいから行くぞ」

翔耀に腕を捕まれた。

行きたくなくて、私を連れていこうとする翔耀に対抗するため踏ん張る。

「行かないって言ってるでしょ。あいつの勝ちたいって願望に付き合うのは癪に障るの」

「その考えの方が花織より自己チューだろ」

っ!

そんなことはわかってる……。

「花織に自己チューって言う資格ないだろ。お互い様だろ??」

「……ホントにあの女嫌いなんだもん」

そんな言葉しか出てこなかった。

翔耀に呆れられたかな……。

「小学生じゃないんだから。自分の感情も押さえれるだろ」

呆れたような翔耀の声に耐えれなくて、ムキになってしまう。

「いつも押さえてるけど押さえれなくなったからこうなったんだよ!」

嘘はついてないし、事実だ。

食事の時だって〝不味い〟なんて言うし。

作ってくれた人に失礼じゃん。

そういう人が嫌い…。

「わかったからさ。ここにいても家にも帰れないんだから進もう?」

なんか、ここで〝わかった〟って言うのは嫌だ。

私、プライド高いのかな。

「進みたいんなら翔耀だけ進めば良いじゃん」

そう言ってしまうんだ。

「それじゃ意味がないからさ。頼むから進んで?」