「そ、そんな事ないよ!!!」
ニヤニヤした顔を元に戻しながら、僕は言った。
「そ、ウチもう一回出かけてくるから」
「何時になる?」
「わりぃ、夜中になるかも」
「そっかぁ………分かった頑張って?」
僕が何も心配ないと合図する笑顔に捺夜は、なぜか硬直。
「………捺夜?」
「翔夜………」
「なぁに」
「キス………していぃか?」
え?
「ちょ…捺………」
名前を呼ぶ前に唇を塞がれた。
長くて、甘い、蕩けるようなキスだった。
「捺夜…………」
唇を離したら、捺夜がキリッとした目を僕に向ける。
「わりぃ……行ってきます」
赤い顔を隠しながら捺夜は、被っていたニットを深く被って、玄関を出ていった。