翌朝、家を出ると何故か家の前に稲葉がいた。
「おはよー!先輩!!」
「な、何で貴様がここにいる!?」
あまりの驚きについ素を出してしまう。
「いやぁ、この近所に偶然友達が住んでてサ。
そいつに聞いたの。先輩の家」
あっけらかんと言う稲葉。
わたしはただ呆れるだけだった。
「あのな、今の時代、貴様みたいなヤツことストーカーって言うんだぞ」
わたしは冷たく吐き捨てて、学校に向かおうとした。
「待って下さい!!
せっかくだから、一緒に行きましょーよ!!」
「残念ながら、先約がある」
稲葉がガクリと肩を落としたとき、わたしの携帯が鳴った。
梓からの着信だ。
「もしもし?」
『ごめん、いばらちゃん、風邪引いちゃった…。
今日はお休みする…』
電話の向こうの梓は鼻声だった。
電話を切ったあと、わたしはうなだれる稲葉を振り返った。
「一緒に行く予定だった友達が休むそうだ。
不服だが、どうしてもと言うなら一緒行ってやっても構わない」
稲葉は、ぱっと顔を上げた。
「どうしても先輩と一緒に行きたいです!!」