梓の目は本気だった。
「…あづ…」
「あづはね!
…あづはずっと、見てたんだよ。
兄ちゃんに純粋に恋するいばらちゃんのこと…」
梓はゆっくりとわたしに近づいた。
「"あの時"のいばちゃん、見ていられなかった」
梓の手が、そっとわたしの頬に触れた。
「どうしてあづは男の子に生まれなかったんだろうって…。
自分の性別を恨んだよ…」
「梓……」
わたしは…壱里の面影を残した梓をじっと見つめた。
「…あ、ごめんね…。
変なこと言っちゃった。
無理だよね。あづたち女の子同士だもんね!!」
梓はそう言って、わたしに背を向けた。
「あづは…変な子だから」
かき消されそうな、弱々しい呟きとともに
梓のセミロングの栗毛が揺れた。
「…それにしても……ソックリだよねぇ。
あの一年坊主くん。
…壱里兄ちゃんに…」
梓の言葉に、わたしは眉をひそめた。