「…えと……誰に…ですか?」 「わたしに決まってんだろ。 いくらわたしでも地面にしろとまでは言わない」 「……え…?」 「わたしの言うことなら何でも聞くんだろう? だったらわたしにキスしろ」 稲葉は顔を赤くしたまま 固まった。 そりゃそうか。 「どうした?キスのしかたがわからないか?」 「いや…あの」 「しかたないな…」 ほんとに 重なっただけのキス。 唇を離したとき 稲葉は口元を押さえ 小さく微笑んだ。 .