始めて稲葉に声をかけられたとき
酷く壱里に似ていると思ったと同時に
こいつも、壱里同様、驚くほど綺麗な顔立ちをしていると思った。
男とも女ともつかない
とにかく『綺麗』の二文字を当て嵌めるのが一番ピッタリくる容姿。
けれど稲葉は
その容姿のせいで父親を失った。
「…バカバカしい話っすよねぇ。
でも父親からしたら…死んだ母親を見てるみたいで辛かったんだろーなぁ……」
稲葉は俯きがちに呟いた。
「……最初……それに気がついとき、母親の面影じゃなくて、『俺自身』を見てほしいって…強く願った」
胸が、チクリと痛んだ。
わたしも、そうだったな。
稲葉と出会った頃のわたしは
稲葉が壱里に似ているからって理由で、あいつと接していたときがあったかもしれない。
…でも…
でも今は……
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