「………ふっ…ふふっ」
「…??」
やっぱり…楽しい。
稲葉といると。
飾ることもしなくていいし
余計な遠慮もいらない。
「ここ、よく見えますね。
花火」
「あぁ。特等席だ」
「隣には先輩がいるし。
俺って幸せ者ですねー…」
稲葉は花火を見上げたままぽつりと言った。
「……当たり前だ」
「…今日の先輩…すっげー綺麗っす」
「…」
「その浴衣も、先輩らしくて似合ってます」
「わたしに似合わない服なんてあるわけないだろ」
「……そうですけど、その浴衣は一段と似合ってます」
顔が…熱い。
照れてんのか?
わたし。
これしきの褒め言葉で?
それを言ったのが
稲葉だから?
「…母さんの…手作りなんだ」
「へぇ、すごいっすね!先輩のお母さん」
「…かなり天然入ってるけどな」
「それでも、羨ましいっす。
……俺…母さんいないから」
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