「先輩、俺とデートしてくれませんか?」

「……は?」



突然の誘いだった。



「最後のチャンスでもいいです」


さっきよりも、真剣な眼差しで、わたしを見据えた。


こいつがこんなふうに言うなんて
強い覚悟をしたんだろうな。



「…月末の土曜、河川敷の花火大会、一緒に行ってください」




稲葉は深く、頭を下げて言った。



「……考えておく」





わたしが答えると、稲葉は嬉しそうに微笑んで

教室に帰って行った。




「いばらちゃんっ!」

「……キョン」

「急に走ってくからビックリしたやん」

「…あぁ…悪い」



わたしは、恭二は見ずに言った。



「……いばらちゃん、31日暇?」

「31日…?」



その日は

稲葉が言っていた花火大会の日だ。



「…毎年花火大会あるやんか?
…出来れば、一緒に行ってほしいんねんけど」


「…え…?」


「…返事は…また今度でえぇわっ!!」



恭二はそれだけ言って走っていった。





.