「こんにちわ、稲葉くん」
わたしは作り笑いをしながら手を振った。
稲葉はわたしの後ろにいる錦谷に目を移した。
「先輩…その人ダレ?」
「…うちのクラスの転校生。
錦谷恭二くん」
「何だ、転校生か!!
よかったー、俺の先輩が手ぇ出されちゃったのかと思っちゃった」
稲葉はニコニコとしながら言った。
っ…コイツ!!
「誰がいつ貴様のモンになった!!」
わたしは稲葉を睨み付け、怒鳴ったあと
錦谷がいたことを思い出した。
「……いばらちゃん……やっぱ変わってへんわ!!」
錦谷は嬉しそうに笑いながらわたしに抱き着いた。
「っ!!貴様ぁっ!!
誰に断ってわたしに抱き着いてんだ無礼者!!」
全身に鳥肌が立ったわたしは、錦谷を突き飛ばした。
錦谷は派手にずっこけ
ドシンと鈍い音が廊下に響いた。
「先輩やり過ぎ!!」
「あ…」
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