「じゃあ…ばいばい」
「うん、また明日」
わたしたちは、玄関でキスを交わして別れた。
壱里の姿が見えなくなると、わたしは自室に戻って、窓の外を見た。
(当時わたしはマンション住まいだった)
ちょうど、壱里が交差点で信号待ちをしていた。
と、その時
一人の少女が、猫を追いかけて、道に飛び出した。
車道には、トラックが走ってきていた。
やばい、ひかれる。
そう思った瞬間
『何か』が、車道に飛び出して
少女を突き飛ばして
キキーーーーー!!!!
甲高いブレーキ音が、灰色の雲が立ちこめる空に鳴り響いた。
わたしは、窓を開けて
その交差点を見た。
トラックの下に広がる
深紅の液体…
見覚えのある、黒色のシャツ…
壱里だ。
そう、わかるまでに、時間は掛からなかった。