「清良先輩平気かな?」

「ん?何の心配してんのかな、綾乃は?」

意味ありげな表情で私の顔をのぞき込む。


「だって、寂しそうだったし」

「清良がお前にしたこと思い出せ」

「でも....」

「綾乃はやっぱ優しいよなぁ」

歩きながら肩に手をまわされて、ギュて抱きしめられた。


「いいんだ。清良が自分で落としどころを見つけるさ」


笑顔で先輩はつぶやいた。




校門まで来ると小坂くんが壁に寄りかかって立っていることに気づく。


何してんのかな?

小坂くんは先輩に話かけてきた。


「今日は綾乃を譲りますけど、これからは手加減しませんからね」


「お前にどこまで出来るかな?」


「ちぇ、言ってくれるなぁ」


二人は顔を見合わせて静かに笑っていた。


「あの子待たせてるんだろ?」


「ええ」


「よりを戻せばいいのに」


あの子って藤崎さんのこと?


「戻す気なんてサラサラありませんよ。俺だって綾乃に夢中なんだから」

ちょっと、本人を前によくそんな赤面もののセリフ真顔で言えるわねっ。

小坂くんはあせる私を見つめた。


「藤崎がいじめのこととか、話したいんだとさ。
何も今日じゃなくたっていいのに。
あっ、でも心配すんなよ。俺はぜってぇよりは戻さないからなっ」


「わかんないぜ。急にいじらしくなった藤崎さんに心を奪われるかもな」

意地悪く一平先輩が口をはさんでくる。



「んなわけないっしょ。綾乃、俺を信じてくれ。
てか、そんなこと言うなら、今から綾乃をさらいますけど」


「頑張って来いよ、小坂くん」

先輩は小坂くんの肩をポンポンと叩いて、


「綾乃は俺のもんだから」


そう言ってグイっと手を引いて歩きだした。


「ちっ」背中で小坂くんの舌打ちが聞こえたような....。