棚倉 京也先輩。

会うのはこれで二回目だった。

「さっさと要件を済ませて下さい」


不快感を隠さずに棚倉先輩に言葉を投げつける。


「冷たいなぁ」


あんなことをされて優しくする人間がいたとしたら、それはよほどのお人よしか、棚倉先輩に好意をよせてる類だ。

私はどちらでもない。

思ってはみるものの声には出さなかった。


「その後、一平とはどう?」


「どうって言われても、いつも通りですよ」


「そうかぁ」


彼は眼鏡のフレームを人差し指でそっと直した。


実際は一平先輩と距離を置いてみたり、色々あるけどいちいち話すのが面倒だった。


それに私の口からそんなことを話さなくても、この人は知っているんじゃないか?

おそらく私の予感に間違いはないはず。