2限目は係決めだ。

初日だというのにいきなり係というのは

早い気もするが、俺としては役割が

すぐに決まってありがたい。

担任が黒板に係と人数を書いていく。

ちなみに生徒会立候補も係決めのうちだ。

「ではまず、学級委員から
  決めていきたいと思います」

立候補はいますか?と担任が聞くが、

皆周りをチラチラと見るだけで、

誰も手を挙げようとしない。

数分経って、先生が「じゃあ…」と

推薦を聞こうとしたところで、


「あ、橋立君。立候補ね?」


手を挙げた俺に気付いた先生が

綺麗な字で黒板に名前を書いていく。

他にいないわね、と先生は確認すると

「では、男子の学級委員は
  橋立君で決定します!」

笑顔で言うと、周りのクラスメイトたちは

パチパチと形式的な拍手をする。

静かになると、次は女子の立候補を聞く。

どうせ推薦になるだろう、と思っていたのだが

周りで話している女子をさーっと見ていると、

1人の女子と目が合った。

その瞬間、見るからに慌てた様子で

他の女子たちの輪に入る。

意味も分からずに顔を背けられ、

少しショックを受けていると、

その女子が勢いよく手を挙げた。


「立候補します!」


挙げた右腕は綺麗にピン、と伸びている。

先生はニコッと笑うと、

「酒舞さんね」と言って黒板に名前を書く。


酒舞、酒舞 秋菜さん。

今まで同じクラスになったことはないが、

名前は知っている。

自己紹介を聞いていなかったわりに

知っているのは、

それなりに彼女が有名な生徒だからだ。

生徒会や各委員会の委員長、

所属のバレー部では部長をしているという、

人望が厚く、クラスでも人気の女子だ。


その他に立候補者もおらず、

3-Bの学級委員は、俺と酒舞さんになった。

「それじゃ二人とも、
  それぞれ一言挨拶してね」

そう言って先生は教室の後ろに移動する。

後は二人で進行しろ、ということだろう。

席を立って教卓の前に出る。

緊張しているのか、

酒舞さんは少し顔が赤い。

「先に言ってもいい?」と聞くと、

「うんっ」と言って、彼女は一歩下がった。

前を向いて全体を見渡す。

皆の目線がこっちに集中しているのに

気付いて、少し緊張する。


「今まで学級委員とか
  やったことないですが、
   上手くまとめていけたら
    いいなと思ってます」


よろしくお願いします、と言って

深くお辞儀をすると、前の方から

自己紹介の時より少し大きめの

拍手が聞こえた。

頭を上げて、酒舞さんの方を見る。

彼女は俺の方を見て軽く頷くと、

俺が一歩下がる代わりに、前に出る。


「今までやってきたことを活かして、
  は、橋立君と協力して、
   このクラスを盛り上げていきたいです」


よく通るハキハキとした元気な声で

言い切ると、最後に礼をする。

パチパチと拍手が起こる。

それが収まると、

先生は「進行よろしくね~」と言って

手に持っている書類を整理し始め、

自分の仕事に戻った。

酒舞さんの方を向くと、

彼女は「進行をお願いしてもいいかな?」

と、まだ緊張の残った声で聞いてきた。

分かった、と言うと彼女は黒板に向かう。


そうして各委員会の委員を決め、

2限目の係決めをスムーズに終わらせた。