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それからあたしは虫かごの中での生活を強要されるようになった。


以前のように床にティッシュを引いてもらうことも、トイレスペースを作ってもらう事もできなかった。


だって、あたしは虫だから。


虫には柔らかな床も、トイレも必要ないから。


食べ物も、人間の食事から虫用のゼリーに変わった。


味は泥臭くて、口に入れた瞬間吐き出してしまう。


それでも、それ以外の食事は一切与えてもらえないから、無理やり口に運び、飲み込んだ。


虫かごの中でこっそり用を足すと、ケース内にはすぐに糞尿の匂いが立ち込めた。


少しでも匂いを緩和させようと手であおいでみても、大して変化は感じられなかった。


当然のようにお風呂に入ることも許されなくなった。


切断された足の傷が治る事はなく、寝ても覚めてもズキズキと刺すような痛みを一日中感じていた。


ウミがたまっていないことだけが、せめてもの救いだった。


陽介君はあたしを虫だと言いながらも、毎日話しかけてきた。


虫は返事をしない。


心の中でそう思ってだんまりを決め込んでいると、飼い主を無視するなと怒鳴られた。


怒りと悲しみと悔しさで何度も何度も涙を流した。