4時間目 教務室にて

「栗梨、起きろ。おい。」

担任の先生は仕切りの向こう側に眠っているのであろう生徒の名前を呼んだ。

「ん、せんせ。うるさい。」
「栗梨、1年の子がいるんだから起きてくれ。」

しばらく経った後、仕切りの向こうから出てきたのは数学の時間に白木蓮の木の下で本を読んでいた男子生徒だった。

「せんせ、誰?」
「俺のクラスの望月 憂依だ。」
「何でいんの?」
「俺が連れてきた。」
「なんで?」
「用があるから。」
「俺起こした意味ある?」

少し不機嫌そうに目を擦りながら先生と話しているのを聞いていた。

「あるから、起こした。望月、そこら辺に座ってくれ。栗梨も。」

座ったあと、彼のことを見てみると、可愛らしい寝癖、子供みたいに目を擦りながら眠そうな顔をしている。

「何?望月さん。」

私が見ているのに気づいたみたい。

「いえ、お休みの時本当に申し訳ございません。」
「別にいいよ。望月さんが悪いわけじゃないし。原野先生がいけないんだから。」

私の隣に座ってそんなことを耳元で呟いた。

「栗梨、また望月に何か言ってるんだろ?ったく。で、話がある。」
「「話?」ですか?」

私と栗梨先輩は顔を見合わせながら首をかしげた。

「望月、栗梨に勉強を教えてやってくれ。」
「えっと、先輩ですよね?私2年の勉強なんて...。」
「別に勉強しなくて良くない?ねぇ?望月さん。」

私は栗梨先輩に苦笑いして、先生の方に向き直った。

「望月なら出来るから。栗梨、やれば出来るんだがやる気がなくてな。望月なら、こいつのやる気を出せるんじゃないかと思ってね。」
「はぁ、分かりましたが、栗梨先輩はいいんですか?私なんかで。」
「望月さんが嫌じゃなければ俺は構わないけどさ。」
「分かりました。」
「話は終わり。教室戻れー。」

先生にそう言われたので教務室を出ると、彼に見つめられてた。

「く、栗梨先輩??」
「あっ、ごめん。望月さん、可愛いなって思って。ねぇ、憂依ちゃんって呼んでいい?」
「可愛くないですよ。栗梨先輩がそう呼びたいなら。」
「栗梨先輩ってなんかやだ。颯輝にしてよ。」
「颯輝先輩?」
「なんかそっちの方がいい。教室戻ろっか。憂依ちゃん、4限何?」
「私は音楽です。颯輝先輩は?」
「俺、確か数学。このままサボろうよ。」
「もう、早速ですか?駄目ですよ。はら、3組の教室まで送りますから。」

少し口を尖らせたが、私が送ってくれるなら受けるといい2人で2年の棟に行くことに。