「悠斗さんは、平気で二股できる人だって、聞きました。」
「はっ?  誰だよ、んな事言ったの。」
「本社の誰かが、そんな事言ってました。」
ああ、情報収集したときか。
彼女の肩を押して、少し距離を離す。
彼女と向き合ってから言った。

 「昔はさ、そうだったんだよ。でも、今は愛実がいるから、他に誰も要らない。」
顔を見ると、少し困り顔。
そう簡単には、信じられないようだった。
取り敢えず、昨夜の説明をする事にした。

 「昨夜は、愛実の言うとおり、元カノと会ってた。 よりを戻したいって言われてたんだけど、それを断る為に、会ってただけだ。
これからも、仕事で会うだろうし、電話とかじゃなくて、ちゃんと会って断ろうと思ってさ。
そのために、会ってた。ちゃんと、俺には婚約者がいるって、言ってきた。」

 「えっ、婚約者?」
「そこで、驚くのか?」
「いや、・・その・・」
彼女がしきりに自分の髪をいじりだす。
これは、照れているのだろうか。
はぁー、こっそりと溜め息を吐いた。
ああ、良かった~。婚約者って言って断って、間違いはなかったようだ。
取り敢えず、誤解は解けたらしい。

 「ごめんな、不安にさせて。」
そう言って、顔を覗き込むと、目が赤い。
泣かせてしまった事に、居心地が悪くなった。
「明日も仕事だし、寝るか。」

一度、立ち上がり、ベッドに入った。
愛実も隣に入ってくる。

何時ものように後ろから抱きしめて、お休みと言った。