「…と! …いと! 海斗!」

莉音が海斗を呼んでいる。

「っ! 何?」

やっと気づいた海斗は、綺麗な涙を流している。

もう遅いが、急いで目元を隠すように抑えた。

「何じゃないわよ!何回呼んだと思ってんの?!」

莉音は、海斗の涙は見なかったことにしているらしい。

小さいが、大きな優しさだ。

「あー、ごめん。」

取り繕ったように笑う海斗。

「ここに来るといつもそうだよね。」

莉音は呆れたように、諦めたように小さく言った。