ヒソヒソ声で話す私達が親しげに見えるんだろう。
長瀬が気に食わなそうに半眼を向けてくるから気が気じゃない。
それを見た浅木くんは、何だか楽しそう。
「ふ。本当余裕ねーな」
「あ?」
「…そういうお前が見れただけでも、十分か」
「何言ってんの?頭おかしくなったんじゃね?」
眉を寄せる長瀬の肩を、浅木くんがグーで小突く。
–––––「この人泣かせるようなことしたら、すぐに奪いに行くからな?」
浅木くんは、長瀬に何かを耳打ちすると、私達に背を向けて立ち去ってしまった。
「今、何言われたの?」
浅木くんを見送る長瀬の背中に問いかける。
「……別に」
「…?なんか、長瀬楽しそうじゃない?」
「そ?気のせいじゃね?」
片方の口角を上げて、意味ありげな笑みを浮かべる長瀬。
男の友情とは、時としてよく分からない。
女の友情なんて、好きな人が同じだなんてなったらもう一大事で、それだけで脆く崩れてしまうことだってあるのに。
どうやら男の友情は、また違うようだ。
私にはよく理解出来ないけど、まぁ、何だか長瀬が嬉しそうだから……いっか。