「ソフィはあの日、死ぬためにここへ来たかったわけじゃない。大好きな人達を助けたかったと、そう思ってるよ」


驚いて、ロビンの顔を見た。真っ直ぐ世界を見る双眸から透明な雫が滑り落ちる。冷えた頬を伝ったそれの軌跡が残る。それにまた息を呑んで、口を噤んだ。


「叶えてあげられなくてごめんね」


瞳は現在(イマ)を映していなかった。業火に燃えるこの町の惨状を映している。とても後悔の念が見えた。

此処で暮らしていた頃は金糸のようだった色素の薄い茶色の髪が時間の経過を物語っている。それがとても悲しく思えた。ここに戻って来る今日までにも、時間は随分過ぎ去った。


「……なんでロビンが謝るの」


「僕がみんなを助けに行く勇気がなかったから。死にたくなかったから。ソフィまでいなくなったらどうしようって、自分のことだけで精一杯だったから」


それは違う。本当は知っている。幼かった私達があの火の海に飛び込んだところでなにもできなかったことを知っている。解っている。

私は今でもあの頃と同じように彼に駄々をこねて困らせているだけだ。だから、否定しようと口を開いた。でも、彼は手で制した。今にも泣きだしそうな顔で彼は笑う。