それが一夜の火事で一変した。強烈な赤が、わたしの父を、母を、妹を、友達を、先生を、ここに住んでいた全ての人を飲み込んだ。揺らめく炎の向こうで泣き叫ぶ声が今でも消えない。耳に張り付いて、こびりついて、いつまで経っても消えない。

わたしとロビンは逃れてしまった。星を見るために、街の明かりに邪魔されないように森へ出かけていたから、騒ぎを聞きつけて町に戻ったあの時、町の外れで死んでいく人達の最期の慟哭を泣きながら聞いていた。

ロビンが必死に止めてくれなかったら、わたしもこの町と一緒に死んでいただろう。ロビンがわたしを生かしてくれた。でも、だからこそ、わたしたちには帰る場所がない。

懐かしいはずのこの場所は真っ黒に焼けて、崩れて、この憎いくらいの白に覆われて、もうどこにもない。


 それはこの世界ではありふれた話。小さな町は国同士の諍いに淘汰される。淘汰される側の声なんて、誰も聞き届けてはくれないだろう。どうしようもない真実。


「ソフィはあの日、みんなと一緒に死にたかった?」


わたしが何を考えていたか、ロビンには容易く想像できたのだろう。ここに来て第一声がそれだから、彼は容赦がない。


「そうだね」


嘘は、吐かなかった。違うと偽ってもきっとそれを掻い潜って真実を求めるだろう。彼はそういう人間だ。なら、答えはシンプルな方がいい。