でもそれは、俺だけで。

俺だけが勝手に舞い上がってしまっただけで。

時間が止まっていたのは俺だけで。

玲子にはもう、恋人がいた。



でも俺は、玲子に恋人ができたこと自体はそれほどショックではなかったんだ。

ショックだったのは、ずるずると過去を引きずったまま過ごしてきたのは自分だけだったということ。

自分だけが、中学生のまま、進めていなかったことに気が付いて、急に世界に置いてけぼりにされた気分になった。


そしたら、無性に不安になって、寂しくなって、堪らなくなってしまった。



『やっぱりコウちゃん好きだなあ』



―――そのときそばにいたのが、マメだったんだ。

マメの優しさにつけこんでるだけだって、絶対に傷つけるって、分かっていたのに。



その時の俺は、マメに縋ることを選んだ。

自分の弱さに、負けたんだ。