そんな微妙な空気のまま、俺は無事受験に合格して、玲子は日本を発った。
どっちが好きと言ったとか、そんなはっきりした関係ではなかった。
ただなんとなく、お互いがお互いの気持ちを知っていて、ただなんとなく察して、ただなんとなく別れた。
付き合っていたわけじゃないけど、そんな別れ方だったせいか、高校生になって、色々な女の子と知り合っても、玲子のことはずっと頭の片隅にあった。
そんな曖昧な思いを、20歳になるまで積み重ねてきてしまった。
誰にもこの気持ちは気づかれていないと思ったし、玲子のことを知ってる人は高校には一人もいなかったし、玲子は日本にいなかったから、俺の中でちゃんと終わらせるきっかけが無かったんだ。
薄れていくわけでもなく、思いを馳せるわけでもなく。
ただなんとなく、が5年も続いてしまった。
そんなとき、玲子から一時帰国を知らせるメールがきたんだ。
ずっと頭の片隅にいた玲子からのメール。止まっていた時間を、動かせそうな気がして、少しだけ、舞い上がってしまった。