……中々無茶言ってるなあ、私。コウちゃんわけ分かんないだろうな。
でも、否定して欲しかったんだもん、あの時。兄妹じゃないよ恋人だよって。俺の彼女だよって。
否定して欲しかったんだもん。
あーあ、コウちゃん、困ってかたまってるよ。
困ったときに唇歯で噛む癖、治ってないなあ。
荷物重いよ、コウちゃん。腕千切れそうだよ。指真っ赤だよ。痛いよ。
コウちゃん。
「……さよ」
「へ」
……おでこに、コウちゃんの唇が触れた。
コウちゃんの唇は冷たくて、思わず目を瞑った。
目の前ののど仏に目を奪われているうちに、両手は重さを失って、荷物はコウちゃんに移動してた。