ふと、遠くの方からパトカーのサイレンの音がした。



恐らく近所の人が殺された女の人の悲鳴を聞いて、警察に通報したのだろう。



「警察か。今捕まるわけにはいかない、彼を殺すのは次に持ち越そう。藤邦アリス、それまで彼は君に預けるよ」



赤い瞳の男は塀に飛び乗ると、チラリと俺の方を見た。



狙った獲物は逃がさない獣……。



その男の目はそんな例えがぴったりだった。



男は視線を戻すとまるで瞬間移動したかのように姿を消した。



「そうみすみすと逃がすか!朱鷺!」



女の人の脇にいた男の人は赤い瞳の男を追って行った。