「さあ、見せてよ。死に恐怖する絶望の顔を……」



男は赤い瞳を細めて、ナイフを振り下ろしてきた。



殺される──。



そう思った瞬間、突然首の圧迫感が無くなった。



酸素が一気に肺に入ってきたことで、俺は立っていられないほど激しく咳き込む。



その場に座り込むと、目の前の男に視線を移した。



でも、そこには赤い瞳の男はいなくて、代わりに見知らない男女が立っていた。



よく見れば、二人の向こう側に赤い瞳の男の姿があった。



「相変わらずクズみたいな性格してるね、切碕(キリサキ)」



「君こそ相変わらず僕の邪魔をするね、藤邦アリス」



俺の位置からはよく見えないけど、赤い瞳の男と目の前に立つ女の人はお互いのことを知っているようだ。