「……でもあれは、ひーちゃんが教えてくれたんだよ?アイツが、私の傘を隠してたって……っ、」
「うん……そうだよ。だけど、ほんとのこと、言えなかったの……」
「ほんとの、こと?」
「ニーナが戻ってきて……桐生くん、意地悪言ったでしょ?」
そうだよ……あの時の秋十は、
ーーーー“ 午後から雨なのに、傘忘れるとかバカなの?”
「ニーナが帰ったあと、さすがにわたしも怒ったよ。でもね、そしたら桐生くん……わたしに言ったんだ。ーーーー“俺が富樫だったら、アイツは一緒に帰ったんだろうな”って……」
「っ、」
「ビックリしちゃったよ。だってさ、本当は、一緒に帰りたかったんじゃないのかな。桐生くんの傘に、ニーナを入れてあげたかったのかなって……」
「嘘、だよ……」
だってずっと意地悪してきたのは秋十で。
いつも、私だけにきみは意地悪で。
絶対君主の大魔王だったんだ。