驚いて、目を大きくする私は、お母さんとの会話を思い出した。



……あぁ、そっか。

お母さんは、最初からずっと知ってたんだね。

桐生秋十があの男の子だってことを。


私を助けてくれた男の子の名前を聞いて、お母さん……“すごい偶然だね”って嬉しそうに言っていたよね?


だけど、知っていたんでしょう。


お父さんのことを忘れずにいる男の子が、こんなにも近くにいるよって。


本当は、ずっと。

きっと私に気づいてほしかったんだ。



「河川敷で、お前を初めて見つけた時。俺の方がビックリしたんだぞ?」


「え……?」



記憶を辿れば、あの日の秋十が、私を見つめて驚いていた。



確かめるように私の名前を繰り返した、秋十。