「なんだよその顔は。嫌なわけ?」


「違うけど……、」



どうやら本気だ……。


「なーんてな?」って、いつもの口癖も出てこないんだもん。



「簡単なことだろ?」


「……、」



答えを待つ瞳が迫ってくる。

河川敷の夏祭りに行くなんて簡単なこと。


むしろ、大魔王だった過去がある秋十が、それを条件にしてくるなんてラッキーだって思う。


だけど、私には難しいことだった。



「なんで黙ってんだよ?」


「……、」


「河川敷の夏祭り、そこに来ればいいだけだろ?」


「……、」


「なんか嫌な思い出でもあるわけ?」


「嫌なんかじゃ……っ、」



キッパリと最後まで言い切れなかった。