「あの子が、お父さんのことを覚えていてくれてると、お父さんも嬉しいだろうなぁって……」



先生だったお父さんは教師として子供達と向き合うことに一所懸命だった。


そのことを私はずっと見てきて、知っていたはずなのに。



「お母さんは……その男の子に会ったことあるの?」


「……一度だけ、声をかけてくれたことがあってね。あの子は、お母さんのこと覚えてるかわからないけど」


「ど、どんな子だったの?」



お父さんが特別に思っていた子だと思う私は、堪らずに問いかけていた。



「笑わない子……どこかに、笑顔を置き忘れてしまったみたいにね」



それを聞いた私は失礼だけどまるで晴くんみたいだなぁって思ってしまった。



「今も、笑わないのかな?」


「それは……、」



宙を仰ぐとお母さんは私を見つめた。



「……ご飯、温かいの持ってくるわね」



お母さんはただ優しく笑って台所へと向かう。



ねぇ、お父さん。

お父さんは私のことを怒ってるかな?


写真の中のお父さんへ問いかけても、当然返事はない。