「仁菜、最近お母さんの手伝いを頑張ってるみたいじゃないか?お利口さんだぞ」


「……っ、」



本当は今すぐにでも抱きついてしまいたかった。

だけど、意地っ張りな私はどこまでも頑固で。



“子供はみんないい子なんだよ。悪い子なんて一人もいない。愛されるために生まれてきたんだから”


先生をしているお父さんは、生徒のことをお母さんに話す時、よくそう言っていたのを覚えている。



「仁ー菜ー?」


「……、」


「お父さんは仁菜が笑ってる顔が、大好きなんだけどなぁー?」



後ろを歩くお父さんの声が優しかった。

それでも、私は素直になれずにぐんぐん歩いた。



「仁菜ー?こっち向いて?おーい、仁菜?」



怒った顔のまま振り返ると、ニッコリと笑って私の手を握ってくれた。


大好きなお父さんの手……。



「先生なんて辞めちゃえばいいのに!」



なのに、私はムキになり手を放した。

そして横断歩道へと飛び出していったんだ。




それから……それから………、